当社は、昭和15年、先代の酒井量平により創業いたしました。
化学に興味のあった先代ですが、当初は建設業を営んでおりました。
戦時中、建設業を廃業したあと、飛行機のプロペラのコーティング剤を製造・販売しておりました。
この商品をプロペラに塗ると、空気抵抗が低下し、非常に重宝されていたそうです。
しかし、終戦を迎え、コーティング剤の需要はなくなってしまいました。
当時、人絹・スフでできたタオルや靴下がすぐに破れてしまうところに着目し、丈夫にする方法がないか、と考えていた先代は、このコーティング剤を改良し、タオル・靴下の強化剤として『強靭』を販売いたしました。
『強靭』は、高島屋や、のちの近鉄百貨店となる丸物にて販売され、ヒット商品となりました。
類似商品も多々、出現してきたのですが、次のような方法で、『強靭』の優位性を証明しました。
当時、京都市内を走る市電には、布製の旗がつけられていましたが、市内を一周すると、屋根にこすれて、ボロボロになっていました。
その布に『強靭』加工をし、1週間、破損しないことを証明、一気に、評判となり、当時3000枚の旗の加工を受注しました。
家族総出で、手作業で加工を行っていたそうです。
その後、染色試験場による試験を経て、圧倒的な性能で、他社製品とは比べ物にならないことが正式に証明されました。
しかし、時代が流れ、ナイロン・テトロンのような強い素材が出現し、『強靭』は時代遅れとなりました。
当時は、現在のポリタンクなどは御座いません。
写真のような、大きなビンを自転車にくくりつけ、京都市内を配達して回ったそうです。
今のように道路が舗装されている訳ではなく、でこぼこ道を走るわけで、まれに、落として割ってしまう事も合ったようです。